引っ越し

はてなブログから自分のウェブサイトに引っ越しました。 konkawase.com

ごんちゃん

高校時代、いちばん仲良しだった友だちはごんちゃんだ。ごんちゃんちの犬の名前が「ごん」で、それを飼っている彼女も「ごん」になったらしい。高校に入る前からごんちゃんはごんちゃんだったらしく、ごんちゃんはごんちゃんと呼ばれることに慣れていた。 私…

風物詩

大学生の人たちがXで、「卒論が終わった!」「春休みだ!」と喜んでいる。その一方で、私の家庭教師の先生は「採点が終わらない」と冗談っぽく嘆いたり、来年度のシラバス作りに追われたりしている。先生に授業してもらう関係は、この1月でまる1年になった。…

口止め

えびせんの袋に口止めシールがついていた。ぱっと「口止め」だけが目に入ったばっかりに、うっかり「食べたことをえびせんに口止め?」っていう問いを経由したんだ。と夫に話したら「罪悪感があるってことだな」と返された。 ひとりじめするはずだったえびせ…

「最後に質問はありますか?」

「最後に質問はありますか?」「このあたりでおいしいひつまぶし屋を教えてください」 学生時代、インターンでマスメディア業界の中を見て、「私はモノを作る会社に入りたい」と思った。誰かが作ったモノの情報を扱うよりは、「当社はこれを作っています」と…

私たちの協働

友人のウェブサイトと、友人と一緒に始めるプロジェクトのウェブサイトを作っている。 ウェブサイトに使う写真は、夫に撮ってもらう予定。彼はカメラが好きで、バイトも写真屋だったこともあり、撮るのがうまい。証明写真はともかく、デザインワークで使う写…

かつて愛された

辞書はわからない言葉を引くためのものだけど、意味が予想できていて、あえて引くときもある。文章を早く読むなら知らない単語の意味の推測は不可欠で、推測で事足りるならいちいち調べなくていいんだけど、カフェでお茶やインテリアを楽しむのに似て、辞書…

お花のお世話

「あ、紺ちゃんがお花をお世話してる」 私は台所で花の水を替えていた。年末に買ってから2週間ももっているカーネーションの小瓶。年明けに買ったチューリップの長い瓶。 夫に「お世話」と言われて、「なるほど、確かにこれはお世話」と思った。カーネーショ…

26cmの満月

私たち夫婦はパエリアをよく食べる。 始まりは、結婚式の会場を探しに東京へ行ったときだった。手作りの式を屋外で挙げることは決めていたので、農場やキャンプ場をあたっていた。山手線の駅から出て、よくわからずに入った店で食べたパエリア。シーフードの…

風呂の蛇

照明、追い焚き、換気扇を消して風呂に入ることがある。しばらく湯に浸かり、青い壁を見ていたら、水道の銀色の蛇口の先で、水滴が蛇のようにすっと流れた。暗くて静かなところ、静止画と思っていた視界にいきなり動画が現れて、びくりとした。 シャワーから…

台所のクマ

夫がリラックマのパーカーを着ている。胸や背にイラストが印刷されたタイプではなく、リラックマになれるタイプのフリースパーカーだ。フードに目と鼻はない。耳だけがついている。腰の部分には丸くて立体的なしっぽがついている。彼は最近、顔のシミ取りレ…

2枚のワンピース

12月にメルカリで譲ってもらったワンピースの、より新品に近いものをもう1着買った。 1枚目は、出品者いわく、あまり使っていない、傷もない、ただ部分的に壊れたので補修している、とのことだった。かなり安かったのと、出回らない柄だったのとで即決した。…

Perfect Days?

ある作品の主人公の性質や生活が、私のものとかなり似ているとき。作品に触れた人たちが、「こういうふうに生きたい」「視点がおもしろい」「美しい」といった言葉で、おおむね高評価をくだすとき。別の選択肢があったわけではなく、こう生きざるを得ないだ…

壊れたシャープペンシル

1月4日、名鉄で金山駅に向かっていたら、神宮前駅で人がどっと乗り込んできた。しばらく考えて、熱田神宮に参拝した人たちと、セントレア空港からの人たちだと気づく。 普通の平日だと思っていたのは間違いで、世間ではお正月の延長だった。普通の平日の静か…

気配り探査レーダー

17時頃に仕事を終えて、さてさて夕飯を作りましょうかねと部屋を出たら、エアコンの電源がONになっていた。我が家は2LDKで、私の部屋の横にリビングと台所がある。リビングのエアコンの風が台所にも向かう構造。夕食にはまだ早いから、私が台所に立つのを見…

私の1年を彩った100のこと(2023)

1. 年明け早々、CafetalkとLinkedinで見つけたアメリカ人の先生にメール。はじめまして。語学学校で担当していらっしゃる文学の授業みたいなことを、私にもやってくれませんか。一般的なニーズとしては圧倒的に語学(TOEIC対策とか)のほうらしく、文学の授…

1月1日の昼

昼前に起きる。夫はグリルで餅を焼き、私は出汁や具材を作る。合わせて雑煮にする。別の皿に、仕込んでおいた数の子、出来合いの黒豆、かまぼこを載せる。毎年恒例の、元旦の風景だ。 我が家にはテレビがない。静かだ。ひとつひとつに意味をもたせたおせち料…

花束みたいな恋をしていない

人と「好きなものが同じ」ということで仲よくなった経験がほぼない。私と親しくしてくれる人たちは、私と趣味が違う人たちばかりだ。具体的なレベルでは接点がないけれども、抽象的なレベルでは「自分で考えられる」「倫理観が似ている」「何かを作るのが好…

コナンの映画

2023年、いちばんおもしろかった映画体験はコナンである。 私が唐突に夫に「観に行こう」と言ったのは、ちょうど公開初日だった。別に初日に行きたかったわけではない。たまたまだった。平日、休みをとってホカンス(ホテルでバカンス)して帰る日、そのまま…

混乱のクリスマスプレゼント

アメリカの本屋パウエルズで、ハードカバーを2冊買った。スティーブン・ミルハウザーの新作。タイトルはDisruptions(破裂、崩壊、混乱、妨害)。注文して3週間くらいで届いた。 私はものが無事に届くかとても心配する性格だ。荷物の追跡番号で状況を数日お…

褒められたい

「あなたの作品は本当は1位だったんですが、高校生らしくないということで2位になりました。ごめんなさい」 高校3年の秋、電話がかかってきた。夏に受験勉強そっちのけで書いた英文エッセイ。大きめの全国コンクールの審査員からの連絡だった。 私は言葉、英…

駆け込み乗車の代わりに

昔、足首をひねって骨折したから、道では、特に階段では急がない。駆け込み乗車もしない。出発した電車を見送って、次の電車が来るまで列の先頭で待つのが好きだ。遮音性の高いイヤフォンをつける。音楽はかけない。すーっと自分に潜る感じがする。 その日は…

鶏肉とキャベツのビール煮込み

鶏肉とキャベツのビール煮込みを作った。からあげ大くらいに切った鶏もも2枚をフライパンで焼く。そのあいだに、鍋に油とにんにく、薄切り玉ねぎ2個分を入れて炒める。玉ねぎが飴色になったら、鶏ももを入れ、ビール500mlも加え、40分、ふたをせずに弱火で煮…

だからといって

「紺ちゃんのことが、うらやましかったんだよ」 昔お世話になった年上の男性と食事に行った。会うのが久しぶりなので、どうしたって近況報告になる。今どういう仕事をしているか話した。相手の仕事、悩みなどを聞いた。 私はとても疲れて、次の日寝込み、そ…

ガイドがなくなる世界

今使っている英単語帳を終えて、ストックしてある次の単語帳も終えたら、自分のレベルに合った、日本語で意味や説明が書かれている本がなくなる。本屋の、日本語で書かれた参考書コーナーに行くことがなくなる。必然的に、英語で書かれた英単語帳だけになる…

イギリスでの買いもの

イギリスの、家族経営の小さなスタジオで買いものした。注文完了のメールにこうあった: Thank you for bearing with us while we adapt to life with a baby! We are in the office dispatching orders 3 - 4 days a week. Thank you for supporting our fa…

眉間の編みもの

knit 直訳:編むこういう意味もある:眉をしかめる 編みものを再開した。「初心者にはちょうどいいらしいが全く欲しくないもの」で徐々にレベルアップするよりも、最初から欲しいものを編むスタイルでやってきた。マフラーをふたつ編んだあとは、ずっとウェ…

飛散する私への言葉

私の時間は蓄積しない。時間が蓄積する結果できあがる自己認識や自信が私にはない。自分になりそうなものをかき集めても、少しの振動で吹き飛ぶ。点と点をつなぐと線になり、それが通常らしいが、私は今ここの点だけだ。医者は「点として輝け」と言う。私は…

目をきらきらさせて

管理職になる準備の知らせが夫に届いた。私は同じ会社の人事部にいたが、今年から制度が変わったらしく、何をするかは謎だ。今年何かをし、来年もまた何かをし、結果管理職に上がるかもしれないし、上がらないかもしれない。 夫が私にくれる褒め言葉の数は5…

ある日の夜

第1幕 第1場 2LDKの部屋のリビング。18時30分。夫、荷物を携えて登場。 夫「ただいま」 妻、料理の手を止めて台所から登場。 妻「おかえり。どうしてこんなに早いの」 夫「今月は残業しすぎてて。調整さ」 両者、退場。 第2場 夫の部屋。夫、多くの機材に囲…