お城の建築家

build a castle in the air
直訳:空にお城を建てる
意味:いろいろな空想にふける


魔女の宅急便のキキとすれ違った。
外国から来て、これからジブリパークに行くのだろう。
空を見上げて微笑んでいる。
ほうきの代わりに、大きなスーツケースを持っている。

スマホがなかった高校時代、私の遊び道具は電子辞書だった。
おもしろい言葉を探す。
授業中に、build a castle in the airを見つけた時のことは忘れられない。
この直訳で想起されるべきイメージは、ヨーロッパの伝統あるお城なんだと思う。
名古屋生まれの人には、たかしがどえりゃーお金をかけて修復している名古屋城のイメージが先に来るかもしれない。
九州の田舎、教室の窓から見える空に、私はラピュタを建てた。

私が集めた言葉たちは、受験英語やTOEICには現れなかった。
大学生になったら、興味の合う人たちと喫茶店で語り明かす夜が来るんだと思っていたけど、来なかった。
ネイティブやそれに近い先生たちは、直訳を経由しないゆえに、あまり感動がないみたいだった(当たり前だ。私が漢字の成り立ちに都度感動しながら使っているかというと、違うから)。

英語圏の人にも、学習者にも、田舎の人にも都会の人にも共感されにくくて、逆に愉快な気持ちになった。
誰かに言われて好きになったものじゃない。
流行に乗っかって好きになったんでもない。
自分で見つけて、好きになったもの。
共感されにくさが、心のよりどころになった。

共感されないことがデフォルトモードだと、似た熱量で喜ぶ人に出会えたとき、飛び上がるほどうれしい。
似た熱量じゃなくても、私の炎を喜んで、絶やさないように見守ってくれる人がいるのもうれしい。
「これは辞書に載せよう」と言葉を拾い上げた人のまなざしが、自分にも向けられているような気持ちになる。